今回はブラック企業が辛い 辞めたいときの対応策という内容でお話しします。
筆者は人事担当として、普段から労務手続きや、入退社の事務などを手掛けています。労働基準法や民法を頭に入れた上で、人事担当者の仕事をしていますので、ブラック企業で悩んでいる方お役立てできればと考えます。
目次
・まずは「準備」を入念にしよう
・退職日までのスケジュールを考える
・社内ルールを確認する
・未払い残業代等があれば証拠を集める
・過去の退職者の情報を集める
・転職先を決めておく
・退職を伝えるときの注意点
・会社とトラブルになったときは?
・ブラック企業は早く辞めよう
まずは「準備」を入念にしよう
ブラック企業で退職を考えたときには、まずは「準備」を入念にしましょう。準備というのは労働基準法などの関連法令を頭に入れたり、証拠集めなどのことを指します。
まず準備することとして、
・退職日までのスケジュールを考える
・社内ルールを確認(就業規則や賃金規程)する
・未払い残業代等があれば証拠を集める
・過去の退職者の情報を集める
・転職先を決めておく
です。
一つずつ確認していきましょう。
退職日までのスケジュールを考える
まず、退職日を決めましょう。そして退職日までにすることを洗い出します。退職日を決める際には、自分の心身の状態を確認しましょう。心身ともに何日ぐらい持つかを念頭に退職する日を決めます。退職日までに賞与(ボーナス)の支給日もあれば、金銭的に多少の余裕ができます。
心身の状態というのは、ブラック企業は、社員の退職時に、いろいろな嫌がらせをしてくることもあります。そのため、必要以上に心身が消耗したりするのです。体調を整え、できるだけコンディションの良い状態で退職までの計画を考えましょう。
社内ルールを確認する
次に、社内のルールを確認しましょう。就業規則を読み、「退職願はいつまでに提出するのか」(大抵は退職日の1か月前ぐらいです)など退職に関する手続を確認しておきましょう。
就業規則は、退職時や問題が起きたときなど、重要な場面での手続きなどが書かれています。労働基準法により、就業規則は社員誰もが見られる場所に設置しておくことが定められていますので、まずは就業規則をしっかりと読みましょう。
未払い残業代等があれば証拠を集める
次ですが、会社に不法行為(問題行為)があれば、その証拠を集めておきます。というのも、ブラック企業は退職者に圧力をかけたり、退職願を受理しない等の様々な嫌がらせをしてくることがあるからです。圧力に屈しないよう、あなたの会社がしている不法行為の証拠を集めておくのです。
例えば、未払い残業代や不明瞭な減給など、お給料に関することは労働基準監督署も動きやすい事柄です。
未払い残業代があるのであれば、出退勤の記録を細かくメモしたり、ハラスメントのような行為があれば、その証拠を手元に残しておくのが良いです。退職時に会社が嫌がらせをしてきて、、会社と戦うことになったときには、この時の証拠集めが非常に効いてくることが多いです。
過去の退職者の情報を集める
ブラック企業で退職を考えているときには、過去に会社を辞めた社員の情報を集めましょう。「退職をする社員に会社はどのような対応を取ったのか?」この情報は非常に大事です。
ブラック企業であれば、退職する社員に対して、不法行為をしていたりと厳しい対応をしていることが多いです。このような会社の行為は、社内に簡単に広まるものです。これらの情報を集めて、事前にシミュレーションをしておきましょう。
転職先を決めておく
ブラック企業を退職する際には、事前に転職先を決めておきましょう。転職先が決まっていると、心の余裕もできますし、転職先の入社日もありますので、ブラック企業からの様々な引き留めや嫌がらせに屈しづらくなります。
というのも、たとえ現職がブラック企業でも、もう次の転職先が決まっていたら、人間の意識というのは転職先に向くのが普通だからです。
ブラック企業を辞めて、その後に転職活動をするのもいいですが、仕事をしていない期間でも何かと生活費や社会保険料が掛かるものです。無職でも国民健康保険料や住民税の納付を求められます。ですので、ブラック企業からの転職を考えるときには、まず転職先を決めましょう。
退職を申し出るときのポイント
ブラック企業は退職を申し出ると、急に社員への対応が厳しくなり、退職願を受け取らない等のトラブルが発生することが多々あります。
まずは、先にお伝えしたように、「就業規則に定められている退職のルール」に従い、手続きを行ってもらうようにしましょう。ポイントとしては、できるだけ「退職を申し出た」という証拠が残るよう、文書を提出したり(その文書を提出した日付をメモしておく)文書の受け取りを拒絶されるようなら、メール等の記録が残るような形で退職を伝えましょう。口頭で退職を申し出ると、「言った」「言わない」の食い違いが起きることも考えられます。
また、民法には退職に関するルールが定められていますので、知識として頭に入れておきましょう。民法では期間の定めのない雇用契約については、いつでも解約の申入れをすることができるとされており、解約の申入れの日から、2週間で終了することとなっていますので、会社の同意がなければ退職できないというものではありません(民法第627条) 大阪労働局(参考リンク)
上記のように、退職願(解約の申入れ)を会社に提出すれば、2週間後に契約は終了(退職できる)します。民法上は、会社に退職の意思を表示したら、2週間後には会社に行かなくてよいのです。
このように、退職願を受け取らないというのは問題ではなく、退職の申し入れで効力が発生するのです。退職に関するルールは、就業規則と民法により定められていますので、しっかり読んでおきましょう。
会社とトラブルになったときは?
ブラック企業を退職する際には、トラブルが発生しやすいのは事実です。会社が退職願を受理しないときでも、退職日を最後に、あとは出社する必要はないのです。ここでは、会社の退職時に起きやすいトラブルについて触れておきます。
有給休暇を使わせない
ブラック企業の中には、退職時に有給休暇を使わせてくれない会社があります。有給休暇の使用を社員が申し出てきたときには、本来、会社は拒否できないのです。
ただ、会社が有給休暇の使用について「日付の変更を申し出ることができる」ときがあります。これは、「時季変更権」といわれるものです。
有給休暇の時季変更権は、あまり頻繁に出てくるものではないため、社員の退職時に有給休暇の時季変更権を会社が主張するのは困難です。有給休暇の取得については、労働基準法第39条に定められています。有給休暇の取得は労働者の権利です。
このような有給休暇取得に関してトラブルが起きた場合には、労働局に相談しましょう。
労働局には「個別労働紛争解決制度」という制度があります。これは労働局が会社と社員のトラブルの調停に入るもので、申し出れば労働局が無料で迅速に対応してくれるのです。
労働局の窓口に行き、証拠を持って職員に状況を説明すれば、1週間以内に会社に連絡がきます。
離職票を発行しない
ブラック企業の退職時トラブルによくあるのが、「離職票を発行しない」というものです。離職票は失業保険を受ける際に必要な書類です。これがないとハローワークで失業保険の申請ができません。
会社が離職票を発行してくれないときには、ハローワークに「会社が離職票を発行してくれない」と申し出ましょう。ハローワークの職員が会社に連絡を取り、離職票の発行を促してくれます。
研修費用を請求される
ブラック企業でよく耳にするトラブルの一つに「研修費用の請求」があります。「あなたの研修には多額の費用が掛かっている。この費用を負担してもらうよ」と不当に研修費用を請求してくるのです。
いきなり多額の費用を請求され、焦る方もいるかもしれませんが、冷静に対応しましょう。
労働基準法の第16条では、会社などが社員に対して、違約金を支払わせることや、損害賠償額をあらかじめ決めておくことを禁止しています(賠償予定の禁止)
出典:弁護士ドットコム
このように、研修費用等を請求するのは違法ですので、冷静に拒否して構いません。
ブラック企業は早く辞めよう
筆者は人事採用担当として、多くの方と面接でお話ししています。経歴書を読んだり、面接で仕事の話を聞いていると、明らかにブラック企業と思われる会社にお勤めの方とお会いします。
採用する面接官の方も、応募書類からブラック企業であることは読み取れます。ですので、ブラック企業を辞めることにそれほどネガティブな感情を抱く必要はありません。
転職や退職がうまく成功し、ブラック企業から抜け出すことができると、数か月もすればブラック企業の記憶も薄れていくものです。
ですので、自分の考えや生活を大切にし、自分が心地よく働ける環境を見つけてください。
では!