転職活動の面接では、必ず「志望動機」を聞かれます。志望動機といっても、それほど強い動機があってその会社の中途採用を受けている人は少ないのが本当のところだと思います。
中途採用担当者である筆者は、数多くの志望動機を目にしてきました。今回は、「志望動機が浮かばない」と困っている方のために、どのように志望動機をつくればいいのかをお話します。
目次
・志望動機の構成法
・まずは仕事の経験を振り返ってみる
・志望する企業を調べる
・自分と企業の接点を探す
・志望動機のNG例
志望動機の構成法
転職の面接で、志望動機をどのように作ればいいのでしょうか?結論から先にお話しますと、
<志望動機のつくり方>
・今まで社会人としてこういう経験をしてきました(自分の経験とスキル)
・今後はこの経験を踏まえて、こういう方向性で進んでいきたいです(今後のキャリアプラン)
・御社と私の接点はこういうところがあります(方向性の一致)
↓
ですので、御社を志望しています。
このような流れで志望動機をつくるのが一般的です。
まずは仕事の経験を振り返ってみる
志望動機をつくる際にまずすべきことですが、「自分の経験をじっくりと振り返ってみる」ことから始めます。
面接は仕事での経験やスキルについて話す場です。「自分のことはよくわかっているから、準備をしなくても大丈夫だよ!」という方もいますが、実際のところ、30代~40代ぐらいの経験が豊富なビジネスパーソンだと、過去に経験した仕事を忘れていたりもします。
ですので、面接できちんと整理して伝えられるよう、自分の経験を振り返ってまとめる作業が必要なのです。
最初に、時系列に沿って、自分が担当した仕事を振り返り、ノートなどに書き起こしてみましょう。当時の状況を思い起こし、5W1Hを意識して、書き出していきます。
文字に書き出すことで、自分の行動、体験、身につけたスキルを客観的に眺めることができます。ここでのポイントは、「その仕事を担当したときにどのような感情を抱いたのか?」についても想いを巡らせてみることです。
どんな状況で、そのとき何を思ったのか?このような心の動きを思い起こし、自分だけでなく同僚の反応なども書き出してみましょう。このように感情の動きなども書き記すことで、面接で話す際にリアリティが増すだけでなく、自分の志向を把握することができるのです。
仕事については、過去の経験を書き起こしてみて、
・どのような点に苦労したのか?
・どのような点を工夫したのか?
・その仕事からどのようなことを得たか?
こういった点を整理してみましょう。できるだけ詳細に、細かく書き起こしてみましょう。
もちろん、非常に手間が掛かる作業で、時間も必要になります。しかし、転職活動の準備の段階で、しっかり時間をかけておくと、のちのちの活動を非常にスムーズに進めることができます。
まず、自分の仕事の経験を丹念に振り返り、文字に起こすことに時間を使ってください。
「過去に経験した仕事をだいぶ忘れてしまった」という方は、会社のスケジューラーを見直すとよいでしょう。最近はgoogleカレンダー等のスケジューラーで細かく管理している会社が多いと思います。誰と、どんな仕事をしたのか忘れている方は、じっくりとスケジューラーを眺めてみましょう。
志望動機のネタや面接で話す内容など、あらゆる情報がスケジューラーには残っています。スケジューラーを見返すことで、「そういえば、こんな仕事をしていた!この話題は面接で話せるな」と思い出すこともあります。
志望する企業を調べる
次にすることは、志望する企業を調べるです。あらゆる情報を探し、じっくり調べることに時間を使ってください。
なぜなら、面接で面接官は「応募者がどの程度、会社のことを調べているか」をも採点のポイントにしています。どの程度調べているかによって、志望度合いや調査能力などを測っているのです。
特に40代の転職活動になると、会社選びは非常に重要な意味合いをもっています。あまり下調べをせずに面接に臨むと、質疑応答でわかってしまいます。
志望する企業の扱うサービスや、業界の勢力図、その企業の将来性といった項目を念頭に、インターネットなどで調べていきましょう。コーポレートサイトや検索エンジン、メディアやSNS、企業情報、日経テレコン等のデータベースなどを丹念に見ていきます。志望度が高いのであればなおさら、できるだけ情報収集をしましょう。
その企業の書籍が出版されているようであれば読んでみる。商品やサービスを実際に買ってみる。特に志望動機をつくる上で、その企業の書籍にヒントがあることが多いです。Amazonで志望する企業名で検索を掛けると、書籍が出てくることがあるので、購入してみるのもいいでしょう。
また、可能であれば志望する企業の社員と会うのもおすすめです。このような「一次情報」は面接の志望動機をつくる上で、非常に説得力が出てきます。
自分と企業の接点を探す
次にすることはもっとも重要な「自分と企業の接点を探す」です。接点は、先にも述べましたが、実際に自分が体験した「一次情報」のほうが説得力が増します。
ここで、もう一度、志望動機をつくる流れをお伝えします。
志望動機のつくり方としては、
①自分はこういう経験をしてきました
②その経験を通じて、今後はこのようなキャリアを歩んでいきたいです。
③御社と自分の接点はこんなところにあります
④自分はその接点を通じて〇なことを思い、御社に非常に共感しました。
このような流れが非常に多いです。自分の今までの経験と、志望する企業の接点を見出し、方向性が一致したので志望したという形です。
自分と企業の接点の考え方ですが、いろいろ企業の情報を集めた上で、
・自分のキャリアが活かせそうだ
・このような施策に力を入れているので、自分も加わりたい
・実際にサービスを利用してみて非常に共感した
など色々なことが考えられます。
企業の方向性は、IR資料に目を通したり、あるいはコーポレートサイトの採用情報や、採用情報に登場する社員の声、その企業の書籍など、色々なところにヒントとなる情報があります。
このようなことからも、志望動機を考える上で、非常に情報収集が重要なのです。
志望動機のNG例
ここで、実際に面接で話す志望動機について、NGの事例を紹介してみます。このような志望動機は面接では使わないようにした方が無難です。
①「給与や待遇、福利厚生などに魅力を感じている」
「待遇面の良さ」を志望動機で話すのはあまり良くありません。たしかに、本音としては待遇面に惹かれることもあるでしょう。
待遇面に惹かれての志望動機は面接官ウケしないことは事実です。
というのも、採用する企業側としては、中途採用で人を雇い入れ、高いパフォーマンスを出してもらい、利益を稼ぎ、会社の事業を継続していくのが意図なわけです。
ですので、まず仕事面でパフォーマンスを発揮してほしい。パフォーマンスを出す前から、「待遇が魅力的」と主張されても困る感じがするのです。ですので、待遇面を志望動機としてアピールするのは控えましょう。
②「会社の立地がいいから」
たまに志望動機で「自宅から通いやすい」「通勤が便利なので志望しました」という方がいます。若手の応募者の方で見られます。こちらもNGです。
待遇と同じように、転職の大前提として「仕事」があるので、このように本筋とはかけ離れた部分を志望動機とするのは止めましょう。
③「スキルアップしたいから」
こちらも注意を要するワードです。自己研鑽を惜しまない姿勢を見せる感じで、一見、よく見えますが、面接官としては「スキルを身につけた後に退職してしまうのではないか」と感じるのです。
人材輩出企業なら別ですが、多くの会社は社員を雇い入れてパフォーマンスを発揮してほしいと思っています。スキルを身につけようとする向上心は評価ポイントですが、スキルだけ身につけて他社に行ってしまっては企業としては困る。ですので、スキルアップを強調しすぎるのは避けておきましょう。
まとめ
志望動機を考えるのは労力がかかる作業です。ここまで読んでも、なかなか志望動機が浮かばない方もいらっしゃると思います。
そういう方は、「志望する会社と自分の目指す方向性が一緒である」という視点で考えてみてください。
一例ですが、商品開発に強みのある企業であれば、「新しい物を作り出し、マーケットを広げていく会社に、自分は共感した。そして自分の経験が活かせると思った」などです。
志望する企業の強みを分析し、その点に「惹かれた」。そして自分の能力を活かしたいと思った。自分の強みやセールスポイントを把握し、その企業と結びつけるのです。このように志望動機を考えるのもいいでしょう。
志望動機を考えるのは大変ですが、よい志望動機であれば面接の評価も高くなります。じっくり時間をかけて考えてみてください。